
副業は魔法少女ッ!
第1章 アルバイトで魔法少女になれるご時世
「そうだ、いけない」
女がさっきのガラスペンを取り出した。それがどこから現れたのか見えなかったのは、ゆいかが呆気に取られていたせいだ。
しかし次に起きたことに関しては、仕掛けを見落としたとは割りきれない。
しゅわ……。
パズルのピースは戻っていた。ゆいかの記憶の中でのことと同様、煙にもオーロラにも見える光が女を包むと、彼女の格好は日常にとけ込めるものに戻っていた。
「危なかったー……変身解くの、忘れるところだったわ」
もう何を聞いても驚けない。それは、女に備わる不可思議な力を信じざるを得ない物証を、立て続けに見せられたからというのが大きい。
女は瓜生なつると名乗った。今しがたの早着替えは、よくある子供向けのアニメなどと似た理屈によるもので、腰に巻かれていた鎖は彼女の武器。早い話が、公衆の面前で出したままにしておくのは具合の悪い代物だった。
追加で頼んだ三人分のお茶がテーブルに運ばれてきた。
ゆいかはカモミールのハーブティー、なずなはカフェオレ。なつるはコーヒー。各々の飲み物を配りながら、なつるが話を切り出した。
「まず、ゆいかちゃん。なずなちゃん。変身した私の姿が見えた二人は、魔法少女の素質があるわ」
「えっ」
なずなの目が輝いた。
ゆいかは、なずなならともかく、なつるのような女の口からその単語が飛び出すと、もう一度聞き返したくなる。
