
ほしとたいようの診察室
第6章 回想、はじめまして
「おはよう、初めまして。今日から、ここで働く事になった、日野陽太です。よろしくね」
そう言って、一歩、病室に入ると、のんちゃんは少し怯えた目をしてベッドの上で身を引いた。
……他の子より、警戒心が強い。
「のんちゃん。あいさつ」
優先生に言われたのんちゃんは、俺をちらっとみると、うさぎと一緒に布団に潜り込んだ。
優先生はその様子を見ると、のんちゃんの布団に目をやりながら、代わりに紹介する。
「……最初はこんな感じ。みんなからは『のんちゃん』って呼ばれてる。好きな食べ物はプリン……のんちゃん、何歳だ?」
少し間があって。
「ごさい。……このまえね、おたんじょうびのケーキたべたの。おおきいやつ」
優先生の問いに答えると、布団の山がもぞもぞと動く。
「へぇ、いいねぇ、ケーキ。陽太先生も食べたいな」
布団の山に話しかけると、少しだけ嬉しそうな声が返ってくる。
「のんちゃんがたべちゃった」
ぐふふ、と小さく聞こえる。
警戒が少し解かれたような気がする。
優先生も、優しい目をしながらその様子を見ていた。
「あとでまた来るから、おとなしくしてな」
そう言うと、優先生は布団の山をぽんぽんと撫でて、病室をあとにした。
