
ほしとたいようの診察室
第7章 回想、主治医の苦悩
無理もない。
喀痰吸引は細長いチューブを口から入れて、掃除機のように痰を引く作業だ。
いま、ただでさえ痰が多いのだ。時間もかかりそうなことを考えると、少しかわいそうではある。
「でもさ、やらないと、もっと苦しくなっちゃうかもしれないよ。いま、のんちゃんの胸の音もごろごろ、苦しいって言ってる」
奥の手は、看護師さんに抑えてもらう。
けれど、こちらもできる限りのんちゃんの気持ちを汲んでやりたい。
「……」
黙り込む、のんちゃん。
吸引したあと、すっきりすることはわかっているのだ。
「頑張れるかな?」
丸くなった小さな背中をさする。
……大丈夫、大丈夫。
そんな気持ちも込めて。
「……うん」
ようやく、頷いてくれる。
