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土竜と猫の憂鬱

第1章 普遍的なもの。

「なんか、面倒くさそうだなぁ。豚肉だったら、生姜焼きでいんじゃね。」

そう言うと、土竜が天然パーマの髪を揺らして、細い眼で俺を睨んだ。

「駄目です、猫さん。たまには違う物も食してください。ちょっと小洒落た料理屋に連れて行かないと女達は拗ねてしまいますよ。」

どーでもいい。拗ねる女なんて、こっちから願い下げだわ。と思っていたら、土竜がキッチンに向かって行った。
2DKの狭い狭い賃貸で、土竜は鼻歌を歌いながら枝豆をすり潰し、ご満悦な様子。
メンソールの煙草を灰皿で揉み消して、豚肉のピューレがけが出来るのを相変わらずベッドの上でゴロゴロしながら待った。
土竜が肉を焼く、脂の匂いが充満した。俺は綺麗好きで、服に匂いが移るのが嫌なので「換気しろよ」と土竜にキツく注意した。
土竜は注意すると、いつも聞かないふりをする。

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