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戦場のミハイル

第2章 市街戦での孤立、息をひそめて生還せよ!


「ミーシャ!前はどうッッ!?」


ミハイルはカン高い女の声が頭に響いた


緊迫しているのは理解できるが、もう少しトーンを下げてほしい


同じコックピットに座っているうえに通信ヘッドホンを装着しているので耳元で叫ばれているようだ


「……ここからは敵影は見えないね、向こうも隠れているんだろ……、

ナスチャ!このまま彼らが立ち去るまで待機しよう」


アナスタシアはミハイルの意見に同意した


今は崩れ落ちたビルのガレキの隙間に機体を滑り込ませている

正面から侵入して来られない限り見つかる心配は無さそうだ


ふたりはコックピット内でも息を潜めていた


ふたりが乗り込んでいる機動兵器は戦闘車輌の小型タイプだ


戦車のような砲塔がひとつ

周囲には小型のマシンガンや電撃兵器も装備している

戦車とは異なり無限軌道キャタピラでは無くノーパンクのタイヤが6輪で駆動する


ミハイルたちは本隊から離れ偵察任務に就いていたが、敵影を発見したと同時に囲まれてしまっていた


本隊からはかなり距離があるので味方に損害は出ないだろうが、無駄に動き回ると帰還出来なくなってしまう


数カ所に有線カメラを仕掛けたので危険は察知できるだろう


操縦桿を握るアナスタシアは必要最低限のセンサーやモニターだけを生かし、残りの動力はすべて落とした


砲撃手であるミハイルのモニターも照度が落ちる


コックピット内の温度もどんどん下がってきた


ビルのガレキには雪がまだ残っている


ふたりは敵だけでなく、寒さとも戦わざるを得なくなってしまった


一時間程度で寒さを感じ、ニ時間もすれば吐く息が白くなってきた


密閉度が高いコックピットとはいえ北部地区の冬の寒さは機体を徐々に凍らせていくだろう


「……ナスチャ、大丈夫かい?」


寒さに慣れているミハイルだが、南部出身のアナスタシアにはこたえるだろう



「……アンタ余裕ね……、私には地獄のような苦しみだわ」


上下の階段状に配置された2人乗りのコックピット内ではお互いの顔は見えない


それでもミハイルにはアナスタシアの顔が引きつっているであろう光景は想像できた


「ナスチャ、ヒーターつけるかい?」


「ダメよ、動きが無い以上敵も近くに潜んでいるんだから!」


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