戦場のミハイル
第6章 ニコライ議員の私邸
その2日後……
出入り業者のトラックを借りて、ガリーナたちはニコライ邸を離れた
運転席の隙間から小さな女のコがぴょこんと顔を出す
「ねぇ、リィニャ!どこへお出かけするの?」
「こら、イーラ!まだ顔を出すのは早い!」
「アハハハ!」
マリア婦人の娘イリーナは久しぶりのお出かけを遠足のように捉えていた
奥の荷台からミハイルがイリーナの身体を引っ張る
「こらこら、イーラ!お姉チャンのジャマをしない」
ガリーナはチラリと後ろのミハイルを見る
「ミハイル様、とりあえず郊外へ出たら良いですか?」
「ああ、街の外れだからそんなにかからないよ
そこに墓地があるんだ」
「……墓地?…目的地はそこですか?」
「そうだ、時間はかからないよ」
1時間もせず寂しい丘の上にトラックは停まった
ガリーナ、ミハイル、マリア婦人、娘のイリーナ
4人は墓地の中を進み、一番奥にある大きな墓の前に立った
皆がそれぞれ花を添えているあいだ、ガリーナは後方の退路を確保できるよう警戒していた
ガリーナは警備しながら墓の名前を確認する
「ミャスコフスキー」
ニコライ家の墓だった
〈……墓参り?〉
そのとき、
ガリーナは見た
涙を流すミハイル・グリンカの姿を
〈なぜ? なぜマリア様の男娼のミハイルが?〉
ガリーナには不思議な光景てあった
花を添えると一行はトラックに戻り、帰路についた
「……ご苦労かけたね、ガリーナさん」
奥からミハイルが声を掛けてきた
イリーナはミハイルの膝の上で眠ってしまっていた
「ニコライ様の家系のお墓参りだったのですね」
「ああ、でもニコライじゃなくてマーニャの、
マリアの母親だ」
「……マリア様の……お母様、ですか?」
マリア婦人も言葉を添える
「私のお母様は……かつてのミハイル様の想い人だったのですよ」
「……ええッ!?」