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戦場のミハイル

第6章 ニコライ議員の私邸


ガリーナは深夜、交代の近衛兵に任せてしばしの時間ゆとりが出来た


仮眠をとろうか、

いや、先に食事を?


廊下を歩きながら与えられた自室に戻る途中、厨房のほうにまわってみる


「ガリーナさん、もう今日はあがりですか?」


「料理長?こんな時間まで?」


「なぁに、新しいレシピを思いついたんでね
 ちょっと試しに作ってみたんだ
 アンタも少し食べてみてくれないか」


「ああ、助かりますよ
 ちょうど何か食べたかったんだ」


ガリーナは話しをしながら厨房の裏手にまわる


勝手口を出て裏庭にまわる


先日こじ開けられていた配電盤は新しいものに替えられ、さらに周囲に侵入防止の柵まで設けられていた


厨房に戻ると料理長が皿に盛り付けをしてくれていた


「アジアのスパイスを足してみたんだ、
 なかなか味が深まったと我ながら思うよ」


「配電盤は前より安全になったね」


「アンタも仕事熱心だな、職業病なのはお互い様らしい」


ガリーナは笑顔で応えてから、料理を口にした


「……本当だ、味が深いね」

「だろ? 魚から出汁をとったソイソースなんだとさ、これは当たりかもしれない」


「料理長も職人気質だね」


「俺はここの仕事が気に入ってるんだ

 以前は俺も軍に入隊してたんだぜ

 ライフルじゃないが、フライパンを持ってな」



「料理長は軍のコックだったの?」


「若い時にな、それも前線ばかりだったんだ

 地元の村から分けてもらった食材でな

 兵站の食材ばかりだと飽きてしまうだろ?

 旅をしながら地元の食材を加えていくんだ

 あれはやりがいがあったんだけどな」



「どうして退役したの?」


「俺が作った料理を旨い!と言ってくれる奴らが次々と減っていくんだ
 毎日ね

 若い兵士も、嫌な隊長たちも…


 俺には耐えられなかったんだ、あの環境が」



料理長は下を向いたまま、当時の感情を思い出すように語った…

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