テキストサイズ

シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 3 思惑の余韻

 だが…

 そうは思った、想ってはいるのだが…

 冷静に考えると、それは現実的にはあり得ないことであり…

 ただ、昨夜からの今朝にかけての昂ぶりの余韻のせいだ、とも分かってはいるのであった。

 しかし、朝、ホテルをチェックアウトして、レンタカーに乗り、いざ東京に帰宅するという時点になって…
 なんとなくだが、再び、熱い、和哉の想いが、ハンドルを握っている彼の横顔から…
『まだ帰りたくはない』
『まだ、もっともっと一緒にいたい』
 と、和哉のそんな想いがひしひしと伝わってきていたのである。


 そしてまだ、わたしの和哉に対する様々な想い、思い、思惑の余韻が続いているのは分かっていたから…

 もしも、万が一…
 
 大人の男へとひと皮剝けた、和哉が強引に迫ってきたならば…

 きっとわたしは和哉を…

 彼を拒否できないであろう…
 いや、絶対に拒否など出来ない事は分かっていたのだ。

 そしてもし拒否せずに受け入れてしまったならば…

 せっかくお互いに良い思い出としての、この、今回のお墓参り行脚が…

 最悪の思い出となり、いや、これから先の最悪な二人の関係の始まりになるという事実は、明白なのであった。

 そして、それは、多分…

 和哉自身も分かっている筈なのだ…


 なぜなら和哉は聡明な男の子、いや、男であるから…

 だけど、今、このレンタカー内の二人の雰囲気、そしてお互いの想い、思い、思惑は同じであり、かろうじてお互いを押さえている様なピンと張った緊張感に覆われており、正にちょっとした事でその緊張の糸が切れてしまうような…

 一触即発の状態といえるのであった…

 だから、わたしは必死に考え、そして、自身の心の中で正解、解答を見つけたのである。


 それは…

 ゆかりさんとの約束、そして彼女の存在感であったのだ。

 
 そして、それが…

「実は、今、茨城県の港町の魚市場にいるんですけど…
 カニとか、海鮮系は大丈夫かなぁって…」

 と、いうこのゆかりさんに対する電話であったのだ…





ストーリーメニュー

TOPTOPへ