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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 2 心のリハビリ

 でもこの状態の度にシャワーを浴びる訳にもいかない、なんとかコントロールできる様にしなくては…
 新たな問題となった。

 だが冷静になっても新しい服を着て出掛けてみたい気持ちは残っている、そして誰かに新しい自分を見て欲しいという気持ちも湧いているのである。

 でも、新しい服を買ったら誰でもこの想いは普通よね…
 それにさっき迄の、それらの欲望が急激に自分の胸をワクワクと昂ぶらせ、脳裏をチクチクと刺激してくる様な感覚は治まってはいるのだ。

 よし、とりあえずお洒落をして、化粧をして、昨日買った新しい服を着てどこかに出掛けてみよう…
 そうすれば少しは落ち着くかもしれないと、思うのである。
 そもそもがつい3日前迄は、まずこんな出掛けたい、なんて思いさえ全く持つ事などなかったのだ。
 少し心のリハビリが必要だと思う。

 そしてわたしは化粧をし、髪を軽く流し、昨日買った服を選んでいく。
 夏らしい薄い水色ベースに、やはり薄い花柄のプリント模様のコットンシャツに、やはり薄い藍色の木綿のひざ丈のプリーツスカートを組み合わせ、白いミュールサンダルを選んでいく。

 この選んだ一枚のシャツ、一枚のスカート、一足の靴、それらのデザイン、柄、色、これら全てが2年振りであり、もう『黒い女』ではない事の証明になるのだ。
 そして姿見で自分の姿を、久しぶりの、2年振りの、黒い服以外の自分の姿を見つめるのである。

 お、いいじゃん、全体的に明るくなった…
 そして鏡の自分の顔を見て驚いたのだ。

 わたしが笑っている…
 にこやかに微笑んでいるのである。

 そうだ、昔の顔だ…
 あのゆうじの死の絶望からわたしは微笑む事さえ忘れていたのだ。
 再び心がザワザワと騒ついてきていた。

 やはり少し変化が急すぎる…
 誰かが一緒でなければ、他人と一緒にいるという緊張感がなければ暴走してしまうかもしれない。

 そしてわたしは携帯電話を手に取り電話を掛ける。
 相手はもちろん大原部長であった。
 この『黒い女』の卒業の姿を、まずは最初に見てもらいたいのは勿論、きっかけをしてくれた大原部長なのだ。
 そして彼ならばわたしの心の暴走を止められると思ったのである。
 また一緒ならば適度な緊張感も保てる筈だから。


「もしもし、わたしです、蒼井美冴です…」




 

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