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第5章 夏休み

「それに、ほら、見えないから余計にね!」

と妹が言った。

僕は、

「見えないと余計に?」

と聞きくと、妹は、

「妄想で、違う人のこと考えるとね!このままでもいいかな……って。」

ここまで聞くと、色々と思うことはあるのだが、傷付いたとか、トラウマになったとか、深刻な話ではなさそうだ。そういう点からすると、とりあえず安心した。

妹は続けて、

「で、学校の最寄りの駅で降りて、改札を出ると、後ろから呼び止められたの!男の人に……。さっきは、見てないって言ったんだけど、この時点で見ることになったのよね!見たことのない、40代くらいのサラリーマン風の人。スーツ着てた。その人ね!「時間ないかな?君も嫌いじゃないんでしょ!あんなになってたし……、ね!これからどう?」って言われたの!」

でも、私、その人タイプじゃなかったし、

「「ごめんなさい!急いでるから!」って言って、振り切ろうとしたんだけど、「連絡先だけでも教えて!ハンカチ返したいし!」って言われたから、「ハンカチはあげます!」って返事した後、ちょっと演技して、向こうにいる知らない男子生徒に手を振って「ごめんなさい!待ったかな~!」って大きな声で言ったら、去って行っちゃった。たぶん、その男の子には、変な子だと思われたと思う!」

と言って、舌を出して笑った。

僕は、

「ハンカチ?ハンカチ貸してあげたの?」

と言うと、妹は、

「ま~、成り行きでね!」

と言った。





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