でも、猫系彼氏に振り回されたい
第1章 ツンデレじゃないもん
「ね…出すよ…みな、と…好き」
握る手に力がこもって、果てる。
僕は湊の上に崩れ落ちて抱き合う格好になる。
何も言わないのがマナーみたいに、僕らは無音の時間を過ごして、相手の言葉を待っている。
口を開くタイミングをはかりかねたみたいに、湊が俺の肩をギュッと抱いてくれた。
「早くて、ごめん」
「なに謝ってんの、変なの」
頭を優しく撫でられて、くすぐったくて笑いそうになってしまう。
湊の横に寝転んで、じっと顔を見ていると、だんだんと眠たくなってくる。
「ねえ、寝ないでよ」
天井を見つめていた湊が、ゴソゴソと動いて俺の方に向き直った。カーテンの隙間から入る光に照らされた肌が、直視できないくらいに白く光っている。
「寝ないよ」
「あー、それ。寝る時の『寝ない』じゃん」
「よく知ってるね」
「おやすみ」
じゃあ寝れば?と言いたいのか、不満そうに唇を尖らせて、僕の目を直視する天使だ。
「本当にアイス食べないの」
「凌が起きたら、考えるよ」