
でも、猫系彼氏に振り回されたい
第4章 天使と猫のハーフ
「期待…したらいいんじゃない?」
湊さんから、甘い柔軟剤の匂いがする。その匂いに酔ってしまいそうなほどに。
「じゃあ、期待して待ってます」
抱き寄せる腕の力を抜くと、スッと湊さんは俺の手の中からいなくなってしまった。
「またねえ、凌くん」
軽やかに踵を返す湊さんには、名残なんてものはなくて、虚しさだけが残るような気がする。
本当に期待していいのだろうか。
少し歩いて、湊さんは振り返る。
ニンマリ笑いながら手を振っている。
俺はちゃんと笑えているだろうか。
不安と切なさで、なんともやりきれない。
また湊さんは少し歩いて、振り返る。
携帯を見る素振りをしているな、と思えば、俺にメッセージが届く。
「(パンケーキの絵文字)」
それだけが送られてくる。
俺がシェフの絵文字を送り返すと
「美味しいパンケーキが楽しみ。今日はありがとう。おやすみ」
と返ってきた。
不思議と、心もあたたかく、やわらいでくるものだ。
