夢魔
第1章 娼館の少女
少女は簡素なベッドに腰掛けていた。
痩せた小さな身体に、ぼんやりした薄茶の髪と瞳は、少女の外見をなおさら貧相なものにみせていた。
「こりゃあまた、えらい若い娘だな。 大丈夫なのか?」
男が開口一番言った。
彼が案内されたのはベッドと簡易的なテーブルセットのみが配された、薄暗い部屋だ。
「心配ありません。 とある家柄の出でさ。 まだ若干見たガキではありますがね。 この辺ではお目にかかれない上玉だもんで、是非旦那様にと」
「しかしこんな、……うちの娘よりも小さな」
男の、値踏みする様な目付きに少女が怯える。
自身の体に腕を回しますます小さくなった。
客は大柄な中年の男のようだ。 小綺麗な格好をしているので、少女は病気をうつされずに済むのかと思い、少しだけほっとした。
先程は、太ったどこかの男爵だという男。
またその前は、この娼館の用心棒が、仕事前の味見だと因縁をつけて少女を抱いた。
つまり今日、彼女が相手をする男はこれで三人目になる。
男を案内してきた、痩身で初老の男が客の耳元で何かを囁いた。
ごゆっくり。 意味ありげな視線を男に向けて言う。
そして重い木造りのドアを閉じ、室をあとにした。