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短編集 一区間のラブストーリー

第19章 短編その十九


困った・・・・ ほんとに困った・・・・

朝比奈裕二は困り果てていた。
彼は徳井百貨店に入社して
まもなく30年になろうかという
古参の百貨店員だった。

某大学を卒業してすぐに
徳井百貨店に入社した。

当初は婦人服売り場の
店頭マンとしての採用だったが、
そのルックスの良さ、
もの腰のやわらかさ、
機転の利く頭の回転の良さを買われて
入社2年ほどで外商部へ配置転換された。

百貨店の経営が成り立っているのは、
外商部の活躍によるところが
大きいといわれている。

顧客は地域の大地主、
国会議員、
大物俳優、
大手会社の社長や会長・・・
とにかくお金持ちといわれる方々である。

しかし、それら大口の顧客は
先輩社員がすべて抑えていて
朝比奈のような途中参入のメンバーは
大口顧客からの紹介者などであり、
その方たちは大口顧客の方々と比較して
1ランクも2ランクも下だった。

時代は移り変わり、
高額な買い物をしてくれる顧客以外は
外商から外して専用ネット通販で
賄おうという上層部の考えが表立ってきた。

それは今のままの買い物金額では
朝比奈の顧客はいなくなり、
朝比奈は外商部を
リストラされるというわけだ。

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