短編集 一区間のラブストーリー
第6章 短編その六
私と彼がいい仲になったのは先月の事でした。
彼はM大の学生で
中学生である娘の家庭教師です。
娘の成績はお世辞にも
よく出来る方ではありません。
おまけに服装も派手で
友達付き合いも親として
快くない方達ばかりです。
当初は塾に通わしていたのですが、
てっきり塾通いしているものだと思っていたのですが、
ある日、塾の方から「ずっと無断欠席されてますが
お体の具合でも悪いのですか?」という連絡をいただき、
塾をズル休みしていることがわかったのです。
そこで家庭教師であれば
ズル休みをする事もなく、
しっかりと勉強をしてくれるものだと信じ、
彼に白羽の矢を立てたのです。
彼は未成年で、
これまで家庭教師の経験もないという事でしたが、
とにかく会話が上手で教え方も上手いのか
娘の成績も右肩上がりに伸びていきました。
そんなある日のこと、
娘がインフルエンザにかかってしまい、
彼と勉強を出来なくなりました。
私は家庭教師をお休みしてくださいと連絡を入れたのですが、
マナーモードにでもしているのか、
彼が携帯に出ることはありませんでした。
伝言も残しておいたのですが、
どうやら聞く事もなかったようで、
彼は定時に我が家へやって来ました。
「ごめんなさい…
あの子、インフルエンザで
今日からしばらくは
勉強を教えていただく事ができないの…」
そう伝えると彼は残念そうにしながらも
「じゃあ、せめてお見舞いだけでも…」と言ってくれましたが、
インフルエンザなので
感染させては悪いので辞退しました。
かと言って、
せっかくこうやって足を運んでくれたのですから
追い払うような真似など出来ず、
「よければお茶でも…」と
彼をリビングに招き入れました。