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短編集 一区間のラブストーリー

第8章 短編その八


「もうすぐ平成も終わるな」

枕元のデジタル時計を見つめながら
部長の桜井がポツリと呟いた。

昨年の忘年会で酔いつぶれてしまった私を
介抱すると言ってホテルに連れ込まれてから
あってはならない関係が続いている。


あの日…
泥酔して意識が朦朧としているのをいいことに
ラブホテルで散々に令子の体を弄んだ男。

翌朝、目が覚めて、
二日酔いの頭痛の中で
自分が見たこともない部屋で
素っ裸でベッドに横たわっていることに気づいた令子は何が何やらわからなかった。

とにかく家へ帰ろうと
ベッドから起きだそうとすると、
バスルームのドアが開いて
桜井が全裸で濡れた体のまま令子の前に現れた。


『私は…この男に抱かれた?』

まったく記憶がなかったが、
起きだした令子の姿を見ると
桜井がニヤっと笑ったことで全てを理解した。

「ようやくお目覚めかい?
いやぁ~、昨夜の君は激しかったねえ」

「部長!私を…」

立ち上がった令子の肩を押して
再びベッドに寝転がされた。

「まさか君が
あんなに好き者とは思わなかったよ。
帰りのタクシーの中で
俺のちんこを握って離さないんだから…
まったく難儀したよ。
おまけにラブホに連れて行けってわめくしさ」

『酔って記憶がないことをいいことに
デタラメを言っているんだわ』

桜井のような中年太りの頭髪の薄い男は
令子が一番嫌いなタイプだった。

いくら泥酔していたとはいえ、
こんな男に言い寄るはずはなかった。


「わめき続けるから
仕方なくここへ連れ込んだら
部屋へ入った途端、
いきなりズボンのファスナーを下ろして
ちんこにしゃぶりつくんだもんなあ
そこまでされちゃあ、男としてヤルしかないでしょ」 

キッと桜井を睨みつけると、

「怒った顔もなかなかキュートじゃないか」

そう言いながら令子にキスをしてきた。

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