カクテル好きの女たち
第1章 初めまして、代理マスターです
まるで何かに引き込まれるように
私は店のドアを開けました、
店のカウンターの中で
マスターだろうか?
かなり年輩の男がグラスを拭いていた。
「ギムレットを頼む」
カウンターに腰かけて私は注文をした。
「男性客とは珍しい…
ここはほとんど女性客しか来ないんでね」
マスターはよほど嬉しかったのか
ニコニコしながら用意し始めたが
ものの数分で「痛たた…」と
腰を押さえて座り込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
学生時代、柔道で指圧の心得があった私は
応急処置で腰をマッサージしてあげた。
ついでに「自分のモノは自分で作ります」と
カウンターに入ってギムレットをこしらえた。
「あんた、手際がいいね」
私の作業にマスターは驚いた。
「学生時代にバーで働いていたんです
ほとんどのカクテルなら作れますよ」
そう言うとマスターは目を輝かせて
「どうだね?この店を仕切ってみるかい?」と
俺をスカウトし始めた。
どうせリストラされて仕事もないことだし
俺は快くご厄介になることにした。