短編 姉と弟 世界で一番身近な女
第1章 姉と弟
「ちょっと大介、そこ全然違うよ」
大介の姉の紗希(さき)が
シャープペンシルを
指で器用に回しながら
大介の宿題を見ながらため息をついた。
「えっ?」
どこが違うのだろうか。
何度見直しても
どこが間違ってるのか
まったくわからなかった。
「あんた、ほんとにやる気あるの?
これじゃあ、あんたが入学できる大学なんて
どこにもないわね」
姉の紗希は濃いめのカルピスを飲み干して
弟に悪態をついた。
「イヤなこと言うなよ。
これでも必死に勉強してるってのに」
あまりの偏差値の低さに、
このままでは大学浪人まっしぐらだと
母は姉の紗希に
弟の大介の家庭教師を頼んだ。