もう推しとは言えない *番外編更新中
第21章 番外編 最後の○○
「…あ、着いちゃいましたね…。」
「はは、何ですか、着いちゃったって…。帰りたくなかったんですか?」
「…澤畠先生と、まだ一緒にいたかったです。」
帰りたくない…といえば、帰りたくないけど…。
…澤畠先生と、離れたくない。ねぇ、まだ…流されてよ…。
そんな想いを胸に、私は澤畠先生のジャケットの裾を掴む。
「…椎名さん?」
「…まだ、先生の隣にいたいです…」
「…ダメですよ。ほら…もう帰りなさい?」
澤畠先生は困ったように微笑んで…私の頭を撫でる。
…そう簡単には、無理かぁ…。
「…すみません、ワガママ言って。」
私は…シートベルトを外して、先生の方を向いた。
お礼と…さよならを言うために…。
でも…、
「んっ…」
「…」
グッと腕をつかまれて…噛み付くような、そんなキスをされた。
もう…どうして?私からじゃ、突き放せないのに期待させるようなキスばかり…。
「何で…。」
「…帰したくないと言ったら、どうします?」
「え…」
本気…?本気なら、帰さないで…。
澤畠先生の瞳は、どっちとも読み取れてしまう…冗談にも、本気にも。