白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第15章 熟女 文江
夏のある日の昼下がりのこと。
僕は部屋で時間を惜しんで、
官能小説新人賞に応募する作品を書いていた。
コンコンとドアをノックする音に
「どうぞ」と声をかけると
文江さんがお盆にスイカを乗せて
部屋へ入ってきた。
「うわあ、すごい暑さねえ。
ごめんなさいね、
下宿部屋にエアコンが付いてなくて。
あの…スイカよかったら食べない?
私も一緒に食べようと思って持ってきたけど、
この部屋じゃあ暑すぎるわね。
そうだ、居間へいらっしゃいな。
ええ、それがいいわ」
有無を言わせず僕を居間へ連れて行った。
誘われれば断りきれない。
僕の悪いクセだ。
本当はスイカを食う時間さえ惜しいのだ。
新人賞の締め切り期日が
もうそこまで迫ってきていた。
文江さんはスイカを食らう僕を
楽しげに見つめていた。
そしておもむろにスポーツ紙を取り出し、
この記事、順也くんが書いたんでしょ?
なかなか面白いわよ。と誉めてくれた。