白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第16章 帰国
今日の予定は高校生の南くん。
南くんは、高校生でありながら
ランクAの優秀な生徒だった。
理恵は彼との会話が楽しくて仕方なかった。
三十路に差し掛かった理恵にとって、
若者の情報源が、この南くんだった。
「こんにちは…」
教室に入ってきたときから、
今日の南くんは元気がなかった。
授業中も言葉に詰まり、
黙り込む場面が多々あった。
「お疲れ様、今日はここまでにしましょう」
決められた授業時間が終了した。
南くんはペコリと頭を下げて
教室を出て行こうとした。
理恵はそんな南くんに声をかけた。
「ねえ、もしこの後なにも予定がないのなら、
少しお茶しない?」
彼が本日最後の授業で
理恵は時間に余裕があった。
それと、
南くんの元気のなさが気になったので、
悩みでもあれば聞いてあげようと思ったのだ。
「特に予定はなにもないですから…
かまいませんよ」
いいコーヒー豆をいただいたの、
少し待っててね。
理恵は急いでコーヒーを入れた。