白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第16章 帰国
「南くん、どうしたの?元気ないね?」
問いかけにも俯いたままで、
いつもの南くんじゃなかった。
「ぼく…」
しばらくしてようやく話し始めた。
「僕、今度
アメリカに行かなくっちゃならないんだ」
「あら?海外旅行?いいわねえ」
「そうじゃなくて、
父がアメリカに転勤するんだ。
僕にもついて来いって…
この教室も今日で最後にしますと
ちゃんと言いなさいって、お父さんが…」
えっ?それって
中学生だった私と同じパターン。
つらいよね、友達と別れるのって。
そう言って慰めてあげると、
「違うんだ!
僕、先生と別れるのがつらいんだ!」
まあ、嬉しいことを言ってくれちゃって。
「僕、先生が好きだ!
先生の声、先生の匂い、先生の姿…
全部好きだ!」
あらいやだ。いきなり告白?
でも先生は、おばさんよ。
向こうへ行けば
金髪ギャルがいっぱいいるのよ。
楽しい事を考えなきゃ。
「いやだ!先生がいいんだ。
先生、最後に僕のお願いを聞いてください」
お願い?
「最後にキスさせてください!」
キス?いいわよ。
どこにしたいの?
おでこ?それともほっぺ?