白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第17章 人気作家
飛ぶ鳥を落とす勢いとは、
まさに今の僕の事だろう。
順也が世に出す作品は全てヒットした。
世間では僕のことを、
官能小説のプリンスと呼んでいるらしい。
今にして思えば文江は
最高のあげまんだったかもしれない。
あのとき、文江との情事を拒んでいたなら、
今の僕の地位はなかっただろう。
その地位のおかげで
女には何不自由したことがなかった。
僕の作品のモデルにさせてくれと、
頼みもしないのに、女たちは股を開き、
僕を咥え込んだ。
しかし…
どうやら文江のあげまんのパワーが
切れてきたかもしれない。
なんといっても、
文江はもうこの世にはいないのだから。
新作書き下ろしのペンが進まなくなった。
この世界に身を投じて15年になるが、
こんなことは初めてだった。
昨夜から、締め切り間近のために
僕はホテルに缶詰め状態だ。