白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第1章 プロローグ
「順也。お前、毛、生えてきたか?」
直樹が唐突に言い出した。
「毛って?」
「決まってんじゃん。アソコの毛だよ」
なっ、なに言ってんだこいつ、
朝っぱらから・・・
今日は中学初日の登校日、
入学式も終え、
いよいよ新しいクラスメートとの
新鮮な生活の一日目だというのに。
幼馴染の直樹とは
別のクラスになったが、
心底こいつと
同じクラスにならなくてよかったと思った。
「なに?お前まだ生えてきてないの?」
返答せずに
俯きかげんに登校の道を急ぐ僕に、
直樹は少しだけ優越感まじりの顔をした。
確かに直樹の奴は早熟だ。
小学校の修学旅行で風呂に入ったときも、
直樹一人だけ立派なチンチンだったっけ。
おまけに声も少し風邪をひいた時みたいに
擦れていた。
これが変声期ってやつか?
「じゃあ、直樹は生えてきたってわけ?」
直樹が求めているであろう答えを
僕は言ってあげた。
とたん、直樹の顔が
これ以上ないというほどの笑顔になった。
「だって、もう俺ら中学生なんだぜ。
毛ぐらい生えるってもんさ」
はいはい。そうでしょうとも。
遅からずお前のチンチンの立派さなら
皮も剥けはじめるだろうよ。
僕は得意満面の直樹の顔など見たくもないと
先を急いだ。