白い飛沫(しぶき) ~初恋物語~
第9章 理恵との別れ
夏が過ぎ去り、秋が訪れた。
理恵は壁にかかったカレンダーの
○印をつけた数字を見つめ、
深いため息をついた。
『もうすぐなのね、
神さまってひどい・・・
私はまだ順也に
思いを告げていないというのに』
夏休みの最終日に
両親から渡米の話を聞かされた。
父の仕事の関係で
数年はアメリカで暮らさねばならないという。
理恵は一人で日本に残り、
中学生活だけは
このまま過ごしたいと懇願した。
しかし、中一なんて
まだまだ子供だからと
受け入れてはもらえなかった。
2学期が始まっても
順也との関係は余所余所しいままだ。
『このまま、さよならなんてイヤ・・・
思いだけは順也に告げよう』
両親は今週の土曜日、
友人宅に招かれているとかで
留守にすると言っていた。
「土曜日・・・順也を家に呼ぼう。
そして、せめて思いだけは告げよう・・・」
理恵は生まれて初めて
男性に愛の告白をするつもりだった。
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