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神の口笛

第1章 1


デワトワ国…―――。

ここは8000万人ほどの人間が暮らす島国である。


長らく宗教戦争が続いており、油断できない攻防は30年間にも渡る。

古きを守るクベナ教の、防衛軍基地のひとつ「ガルダン」には約1,000人の兵士や関係者が、日々鍛錬を重ねていた。


数ある中でもガルダンは最大規模の基地。

この物語の主人公エマも当基地に弓兵として所属している。





「エマ!起きて!今日は乗馬訓練なんだから」

「んん……Zzz」

「エマってば!!」

「…まだ眠い…」

「この1年、戦がないからって、ちょっとたるんでない?!ほら、起・き・てーーっ」


クベナ教に反発する勢力はいくつもあるが、前回の戦からそろそろ1年が経とうとしている。


女兵士が少ない中、エマは男にも劣らない戦力として活躍した。


小柄で身軽な体系と、非常に優れた視力が味方したようだ。


エマを起こしにかかっているのは同室のステラ。

彼女も女弓兵だ。

エマとは正反対に、背は高く骨太、頼もしい体格を維持するためか男よりもよく食べる。



2人は朝食をとりに食堂へと向かった。

「あぁ、眠い。私もうすぐテオヌだから…もう弥生の小屋に行っちゃおうかな」

「だめに決まってるでしょ?バレるよ、一瞬で」


テオヌとはつまり生理、月経のことで、クベナ教のしきたりではテオヌ中の女は異性と隔離された空間で過ごす必要がある。


一般人の場合、多くは自宅の地下にテオヌの間こもるための部屋が造られる。


ここガルダン基地では、弥生の小屋という建物が用意され、テオヌ中の女兵士は皆そこで過ごす。


女兵士の妊娠は認められておらず、毎日昼食の際に避妊薬を一斉服用する。


そのため生理が始まる日は全員もれなく把握されており、嘘はつけない。


兵士の数に偏りが出ないよう、バラバラの日程でテオヌの管理がされている。


問答無用で避妊薬を服用しなければいけないのは、基地内での自由性交が認められているためだ。


ただし、相手の同意がない場合には交わってはならないという厳しい規則がある。



エマは21歳であるが未だヴァージン。

それなのに避妊薬を飲むというのはまるで意味がない気もするが、クベナの教えのもと成長し軍入りした彼女にはそれを疑う余地などなく、当然の日課なのだ。


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