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神の口笛

第12章 最終章


33歳になった年の暑い日、退軍後についての授業が行われた。女兵士だけが集められたこの部屋には、同い年のステラも一緒だ。


「これまで自由性交という環境にいた皆さんには感覚の把握が難しいかもしれませんが、基地の外は一夫一妻制の社会です。」


白衣を着たソフィアが黒板の前に立って話し始めた。



「多くは、1人だけパートナーを選び、愛を誓い合い、やがて子に恵まれ…親になっていきます。」


ここにいる者の多くは、愛というものがなにか分からない。

国を守るという固い信念のもと、日々鍛錬を重ねてきたのだ。



「みなさんは35歳で退任になりますね。ふつう、この国の女性は16歳くらい…遅くても26歳くらいまでには、子を持つ習わしです。でも、みなさんは子が持てないかもしれません。」


35歳で退任になる事はもちろん、その後は年齢的にも子が出来にくいということも軍学校時代の授業で皆分かっているはずだ。


神妙に頷く者や、にこやかに話を聞く者の髪が揺れる。



「なので、パートナーというのは今後の人生でもっとも重要な存在になります。もちろん、生涯未婚の人もいますよ。結婚していない者同士の性交は罪にはなりませんしね。皆さん、自分の生き方を見つけましょう。」



これから2年間は肉体的な訓練が減り、退任後の生活についての授業が増えるらしかった。家事や裁縫などだ。



入隊して間もない頃、退軍していく先輩兵士を見送った事がある。

ひとごとだと思っていた「退任」を、もうすぐ自分自身がすることになる。

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