神の口笛
第9章 9
「分からないよ……」
エマは本当になにも分からないといった様子で目を潤ませた。
自分にキスするグレイが、ビアンカにもキスしていた事。
胸をさわられ、ビアンカが悦んでいた事。
ついさっきの出来事が、エマをどんどん混乱させる。
「俺の事はいい。それよりお前はどうなんだ?」
「私?なにが?」
「とにかく部屋に。話はそれからだ。」
グレイ自身、レイモンドの求婚についてエマとしっかり話をする必要があると感じていた。
それはきっと、兄として…―――
「私はレイモンドと結婚しない。それに、本人から直接言われたわけじゃない。」
グレイの部屋に入り、ベッドに腰掛けたエマは即座に言った。
実際、レイモンド本人から求婚の言葉があったわけではなかった。
「幸せになれるのにか?」
「幸せって何?私はこうやってずっとずっとグレイと一緒にいたい。一緒に眠りたいよ。」
「姉妹なら良いかもな。」
「…どういう事?」
「俺は男なんだぞ。」
「そんなの関係ないじゃん!」
「俺の気も知らないで…。」
「わからない。はっきり言ってよ。」
「…。」
少しの間の後、グレイはエマを押し倒して口づけた。
今までになかったような激しいキスは、まるで言葉にならない感情をぶつけているかのようだった。
流れるように首すじを愛撫され、快感で気が狂いそうになる。
強く吸い付かれるその痛みはすぐに熱に溶け、動悸を速めさせた。
やがてすぐ、熱くて硬いものが秘部に当たる。
押し付けられるとお腹の奥がヒクヒクと勝手に脈打った。
「ひゃ…ぁん…っ…」
少し前に舌で愛撫された時とは全然ちがう、力強い欲情を感じる。
秘部から愛液が流れ出てくるのが自分でも分かった。
「男女が一緒に眠るっていうのはな、普通はこういうことを意味するんだよ。」
耳元に低い声が響き、その振動でまた気が遠のく。
「グレイ…ま、待って…」