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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 23 朝の想い

 ブー、ブー、ブー…

「………………はっ」
 午前5時50分、目覚まし代わりの携帯アラームで目を醒ました。

「あ……」
 周りを見渡すと浩司の姿はなかった。

 そしてふと、おぼろげな脳裏に昨夜の彼との激しいセックスが、連続してイキ続けた絶頂感の快感が蘇り、子宮を再び疼かせてきた。

 連続して三回までの絶頂感は覚えてはいたのだが、その後の記憶はなかったのである。
 
 わたしはあのまま寝落ちしてしまったのか…

 洗面台の鏡を見ながらそう想い返していた。

 あ、目が腫れている…

 昨夜、泣いたからか…

 マズいなぁ…

 わたしは高校女子バスケットボールの顧問をしているのだ、あの年頃の女の子達はそんな変化に敏感なのである。

『ああ、先生、昨夜泣いたでしょう…』
 とか
『フラれたんですかぁ…』
 とか、からかってくるに決まっているのだ。

 しまったなぁ…

 わたしは鏡を見ながら、おそらく言われるだろう、朝イチでの生徒達とのやり取りを想い浮かべてしまう。

 ズキズキズキズキ…

 そしてよほど昨夜は激しかったのだろう、昨夜の事を考えるだけで無自覚に子宮が疼いてくる。

 そして、はっきりと目覚めから覚醒すると…
 昨夜のステーキハウスでの奥様とのやり取りが、彼女との会話が、その時の声が、そして素晴らしい逸材といえる彼の娘の美香を指導していた場面が、否が応もなく脳裏に蘇ってきたのである。

 ダメだ、消えない…

 でもそうなのだ、昨夜の今朝なのである、そう簡単には消える、いや、消せる筈がない。

 しっかりと心に刻まれてしまったようだ…

 これは時間が必要であり、そして決して完全には消せる筈がない。

 だが、そんな事は分かってはいる…

 でも、もう、既にわたしは、すっかり彼、大塚浩司を愛している、いや、愛してしまっていたのだ。

 もう遅い、もう心を抑える事は出来ない…

 そして心酔もしていた…

 多分、もう、開き直るしか方法はないだろう…

 そして、そんな事はとうに分かってはいたのだ…

 だけど…

 だけど、もう別れられないし、こんな理由では別れたくもない。

 だって、初めて抱かれた夜から、最初から左手の薬指の指輪を見ていたのだから…

 ただ、まだ、心が…と、自分に、必死に、言い訊かせていた。
 



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