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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 24 心の冷却期間

 わたし自身の心の中では既に答えは決まっていた。

 それは、浩司とは別れない、いや、もう別れられない、と、思っている…

 だから例え奥様と娘の存在を認識しても、開き直るしか方法がない、とも分かってはいたのだ。

 ただ、まだ、時間が足りなかった…
 だけなのである。
 まだ、心の中で存在感を消化出来ないでいたのだ。
 ある意味、既に開き直っていたのであるが、まだ、なかなか心が追い着いては来ていなかった。

 時間が欲しかったのである…

 だが、幸いに、9月上旬から秋のバスケットボールの大会があり、その為に週末は四泊五日の遠征の予定があり、そういった意味ではわたし自身にとってのちょうどよい冷却期間が取れたのであった。

 そしてあの奥様の遭遇の夜に、彼に抱かてから約二週間の間、彼とは時間と距離を開ける事ができたのである。

 そして、より意識して、わたしはバスケットボール指導に集中していった…

 その約二週間の間、もちろん彼から電話や、メールが最初はあった。
 だがわたしは一応、冷却期間を取りたいからという理由を正直に彼に告げて、電話での会話もしなく、メールの返信も交わしなかったのである。
 すると彼自身も少し考えが落ち着いたのだろう、ピタリと着信とメールが止まったのだ。

 そして約二週間、わたし達は会話もしなく、メールの交換もしない14日間が経過した。

 これはわたし達二人にとって関係を持って初めての事であったのだ…

 だが結果的に、この約二週間の冷却期間は、わたし自身にも、おそらく彼自身にとってもよい時間、心の冷却期間となったのである。

 よく食べ物を熟成する、熟成すると美味しくなる…という事があるのだが、この約二週間の冷却期間が正にわたし達二人にとって、その良い意味での熟成期間となったのだ。

 わたし自身はこの時間により、心が完全に開き直る事ができ、より彼の存在感を、愛を認識できたのである…

 そして彼、浩司にも、この期間が彼の中でのわたしの存在感、存在意義、価値をはっきりと認識し、理解でき、愛情の深さがわかった…
 と、後に、そうわたしに伝えてくれたのである。

 結果的にこの時間により、二人の愛情は更に深まったカタチとなったのだ…



 

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