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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 34 天の邪鬼な想い

 わたし達は二年目の秋を迎えた…

 そして二人の愛は円熟期を迎えたのである。
 浩司は昨年、わたしと『不倫』ではあるが、ちゃんと付き合うという証に、其れまでの彼の女関係を約三ヶ月掛けて清算してくれ、その年の冬のクリスマスには二人で落ち着いて過ごせる様になっていた。
 もちろん『不倫』の関係であるから彼には家庭、つまり、奥様と娘さんは居るのではあるのだが、彼曰く、元々わたしと付き合う前までも殆ど家には帰っていなかったらしいし、家では寝ていない、そんな生活リズムは変わってはいないそうだ。
 その代わりにわたしのアパートの部屋で過ごす、という時間が増えたと云う。
 ただ、わたしは私立高校の教師と強豪バスケットボール部の顧問をしている。
 だから、平日は朝六時過ぎには朝練の為に学校へ出勤し、放課後の練習を終えて帰宅するのは夜八時半前後という比較的忙しいハードな毎日を送っていたので、わたしが逢いたい時には学校帰りにスポーツバーへ顔を出すか、メールを入れる。
 すると彼がタイミングを見計らってスポーツバーを抜け出して来宅し、わたしを抱き、愛してくれた。
 そしてよほど店が暇ではない限りは、再びスポーツバーへと戻るのだ。
 だから朝まで一緒に寝るというのはわたしが甘えて望まない限りは殆ど無きに等しかったのである。

 でも、わたしはそれで十分であった。
 なぜなら、わたしの生活リズムは意外にハードなのである、そしてかなり精神的にも肉体的にも疲れるのであった。
 だから、わたしの望むリズムで逢ってくれる彼の想いには感謝していたのだ。
 そしてたまに彼が甘えて逢いたがってくれる時があり、それはそれでかなり嬉しくわたしが合わせるのだ。

 また、最大の危惧的な存在である奥様はスポーツバーにはほぼ現れず、基本的にはステーキハウスに訪れる、というパターンであったのだ。
 だから彼が毎晩ほぼいるスポーツバーにのみ通っていれば、奥様と遭遇する事はまず無かったのである。

 だが、わたしには天の邪鬼の様な性格の部分があった…

 もちろん浩司を愛しているし、この関係を大切にし、ずっと維持していきたいとも思っていた。

 だが、彼のこの結婚しているのにも係わらず、ほぼ家庭のしがらみが全く見えないフリーな生活が、逆にわたしには不満と不安を生んでくるのである…

 



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