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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 37 転換期(2)

 その方針により、各競技共に優秀な指導者達を県内外からピックアップして確保したりして、各競技を強化する事となった。
 そして中学バスケットボール関係は、中央から元全日本アンダー15の指導者を招へいしたのだ。

 つまりそれは元全日本アンダー15のメンバーであったわたしの恩師という事でもあり、それにより一躍注目を浴びる事になったのである。
 もちろん元々わたしの過去を、県内バスケットボール関係者達の殆どはある程度知ってはいたのだが、更に再脚光を浴びる事となったのだ。

 それによりわたしの過去の栄光の事実は、もちろん選手達からその親までにも周知されたのであった…

 そしてクリニック交流会の当日、わたしは会場中の注目を浴びたのである。
 また、県内からの選抜候補として集まった各選手達からも人気者となってしまった。

 だがこのクリニック交流会が後々のわたしのバスケットボール指導者としてと、ある意味人生の転換期の一つとなったのであるが、まだその当時は知る由もなかったのである。

 そしてわたしは浩司の娘、美香ちゃんのプレイに目を見張り、そして感動と感激をし、更に指導者としての昂ぶりを高ぶらせたのだ。
 更にこの、元全日本アンダー15の恩師の招へいが美香ちゃんの今後を決定付ける、やはり、美香ちゃんにとっての最初の転換期となったのである。

「いやぁ、この大塚美香はいいなぁ」
 
「はい、昨年も素晴らしかったんですが、更に成長しました」

「まるで昔の『みっき』、お前を見ているようだなぁ」
 わたしは美紀谷悠里(みきたにゆり)という名前であり、昔からのバスケットボール関係者は皆わたしを『みっき』と呼んでいたのだ。

「いや、そんな、わたし以上ですよ…」
 
 これは、元全日本アンダー15のヘッドコーチである、わたしの恩師との会話である…
 そしてこの日がきっかけとなり、後に美香ちゃんは全日本アンダー15に召集されたのである。


「美香ちゃん、凄く良くなったわね」
 わたしは美香ちゃんに声を掛けた。

「ありがとうございます、去年、美紀谷先生に指導受けたおかげですよ」

「そんなぁ、あなたが凄いのよ…」

「いえ、実は、ネットで先生のプレイのビデオとかを集めて研究したんです」

「あら、そうなのっ」

 わたしにはその言葉は嬉しかった…





 

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