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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 50 変わるきっかけ

 浩司は、現実の流れは理解していたのであった。

 かわいい一人娘の美香ちゃんのバスケットが上手く上達されればされる程に…
 注目されればされる程に…
 この県内でのバスケット関係の中心的立場にいるわたしとの関係が今後ますます深く関わっていく事になっていく…
 と、いう現実の流れを。
 
 そしてこの流れはもはや避けられない現実である…
 と、いう事をも理解をしていたのであった。

 それに伴い、更にますます奥様との関わりも多くなっていく…
 と、いう事も判っている筈であったのだ。

 だから、
『もう会うな…』
 とは、とてもわたしには言い切れなかったのである。

 この時、既に浩司は、これからの、この先の全てを理解していたのかもしれなかった…


「うん、大丈夫よ、平気だから、開き直って、腹も据わったから…」
 だが、その時のわたしは努めて明るく、そう言ったのだ、いや、言うしかなかったのである。

 でもそれは半分は嘘であり、半分はわたしの求めている刺激といえるのであった…

 奥様の存在感を感じれば感じる程に、ジリジリ、ヒリヒリ等と、焦燥感と罪悪感を感じて心が焦れ、刺激され、そしてまた昂ぶってくる…
 そんな刺激的な想いがあった。

 そして娘美香ちゃんのバスケット選手としての高まりが、成長が、背徳感と罪悪感をわたしの心に生んでくる事となり、ザワザワと心を騒つかせてくるのであったのだ。

 そしてわたしは、それを刺激として受け入れてコントロールをしていく、いや、していかなくてはならない…
 と、いう事をこれからは開き直って、腹を据わらせなければとても出来ない、という覚悟決めたのである。

 しかし、その朝の、自分勝手な心の誓いがその後のわたしを確実に変える、いや、変えたきっかけとなったのであった。
 心の中にあった何かの殻が破け、弾けた様なのだ。
 そしてその効果は、わたしのバスケット指導に露骨に露わになったのである。

 そしてその事実の流れはこの後の、秋の地区リーグ戦で現れたのだ…





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