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雨の降る夜は傍にいて…

第6章  小夜時雨(さよしぐれ)…

 49 再会

 春季関東大会…

 毎年会場は関東大会各県の持ち回りで、この年は茨城県で行われた。
 そして会場は、本格的なスタジアム式の大きな野球場と、公式陸上競技場のある最近完成した海沿いの臨海公園式の敷地内にある4面フルコートが設置できる大きくて立派な体育館で行われたのである。
 そして当然の様に並行して野球、陸上競技も同時に開催され、この周辺は大変賑やかとなっていた。
 だからバスケット競技場であるこのアリーナ式の大きな体育館内では観客の中には若干、陸上競技関係者や野球関係者等もチラホラと伺える。

 なんか、賑やかだわぁ…

 なんとなくわたしもこのエリアの雰囲気に心が騒めいてしまっていたのだ。

 だが、そんなわたしとは真逆に、我が新メンバーによる新チームは実に冷静に、そして自信満々にプレイをし、初日の1回戦、山梨県2位の高校チームに快勝したのである。
 そしてその試合に於いて県外高校試合の初デビューとなる浩司の娘である大塚美香は、実に冷静にガードとしてゲーム運びをし、15得点、10アシストという素晴らしい活躍をし、瞬く間に今大会の話題のルーキーとして関東地区に名乗りを上げるプレイをしたのだ。

 そして試合が終わり、明日の対戦相手を会場で見学をする事にして先に生徒達を観客席に行かせ、わたしは他校の交流のある指導者である先生方と会話を交わし、1人遅れて観客席への階段を昇っていると…

「みっき…だよな?」
 と、突然、後ろから男性の声が聞こえたのだ。

 みっき…
 それは『美紀谷(みきたに)』というわたしの苗字由来の仇名であり、バスケプレイヤー時代か、小学校時代以来からの関係者しか知らない呼び名であった。

「えっ…」
 わたしは突然にそんな仇名を呼ばれ、後ろを振り返る。

「あっ…」

 そこには…

 大学3年秋からの元カレである
『山中 遼』が微笑みを浮かべて立っていた。

「あ、えっ、り、遼…ちゃん?…」

「うん、そう、俺、久しぶり…」

 約6年振りの再会であった…


 山中 遼…

 彼は同じ大学の同級生であり、大学3年秋から大学4年の秋までの約1年間付き合った元カレである。
 そして野球部であり、元ドラフト指名された『東京6大学野球』のスーパースターであったのだ。

「ええ、何で?…」

 何でここにいるんだろう?…




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