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　1　ヘッドコーチ

　ダム、ダム、ダム…
　
　ドリブルの音…

　キュッ、キュッ、キュキュッ…

　バスケットシューズの床を蹴る音…


　そして体育館内に籠もっている、汗の独特な匂い。

　ああ、わたしはここに帰ってきた…

「あ、ゆり先輩っ…」
　わたしの姿を確認して、バスケ部の部員達が集まってきた。

「ゆり先輩、こんにちはっ」
「今日はどうしたんですかぁ」
　バスケ部部員達がそう声を掛けてきた。

「うん、実はさ…」
　わたしは明日から、この母校にて臨時採用教員になるのだ…
　そして、同時にバスケ部のヘッドコーチもやる事になった…
　等々を、このバスケ部部員達に伝えたのだ。

「うわぁ、マジですかぁ…」
「うん、そうなの、よろしくね」
「はぁいっ、よろしくお願いしまぁす」

　実はバスケ部のヘッドコーチがメインであり、その為の臨時採用教員なのであった。
　元々顧問のわたしの恩師であるベテラン先生が病気を患い、長期入院となり、紆余曲折はあったのであるが、OGであるわたしに急遽白羽の矢が立ったのである。
　バスケ部に関しては２年程前からちょくちょくとアシスタントコーチ的に顔を出していたから、恩師の先生の急遽入院でコーチ依頼をされ、教員免許を持っているという事で臨時採用教員になる事になったのである。

　裏を返せば、それだけ恩師の先生の病状が良くないという事でもあるのだが…

　だが、この恩師の先生には大変お世話になっていて、また、高校現役時代には特に、特別に目を掛けて貰っていて、正に、足を向けて寝られない、それ程お世話になっていたのであった。

　だがら、直接頼まれて、断るという選択はなかったのである…