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雨の降る夜は傍にいて…

第7章 五月雨(さみだれ)

 5 好事魔多し…

 それは大学3年の春、5月…

『関東女子大学バスケットボールトーナメント大会』
 という、関東女子バスケットリーグの伝統ある大会の決勝リーグ戦の最初の試合であった。
 相手は二年連続優勝を狙うライバル的な大学である。
 当時、その大会の頃のわたしは絶好調であった。

 なぜならその大会前の3月には、初めてアンダーカテゴリーの無い、全カテゴリーからの全日本メンバー召集の30名に選ばれ、更に選考選抜されて次の20名に残れたのだが、しかし残念ながら最終選考選抜の15名からは漏れたのだ、だが、それは物凄いわたし自身の自信に繋がり、この大会の絶好調へと通じていたのであった。
 そしてその通りの獅子奮迅の活躍を見せての、決勝リーグ戦進出を決めたのだ。

 だが、好事魔多し…
 大きな落とし穴にわたしは落ちてしまったのである。

 そのライバル大学チームとはゲームスタート時から一進一退の激しい攻防が続き、最終2分までワンゴール差、つまり僅か2点差の攻防が続く厳しい試合展開であった。
 わたし自身も相手チームからの激しいマークを受け、なかなかいつもの様な得点に結び付けられずにいたのであるが、味方のエースの一人が残り1分30秒にスリーポイントシュートを決める、そしてその攻防の切り代え時、ハーフライン辺りでわたしが相手のパスをスティールし、得意の速攻の展開に持ち込んでいく。

 ここでこの速攻を決めれば残り1分で5点差に拡がり、相手の気持ちを挫く事が出来る…

 わたしはそう想いながら逆サイドにパスを出し、インサイドに切り込みながらリターンパスを貰ってカットイン、出来ればファールを貰って3点プレイの6点差に…
 と、そんなシナリオを一瞬で描きながらリターンパスを貰う為にカットインをした。

 …のであるが、なぜか体力の限界を迎えていた相手チームの180センチ台のセンターが偶然自ゴールに戻れずにいて、慌ててゴール下に走り戻ってきたのだが、自ら足をもつれさせて、カットインしていくわたしの上に倒れ込んできたのだ。

 ブチッ…

 その瞬間、わたしの耳にだけ何かが切れる衝撃音が聞こえ、膝に激痛が走ったのである。

 それは正に天国から地獄へと堕ちる瞬間の場面であった…


 
 

 

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