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雨の降る夜は傍にいて…

第2章 春雷

 11 ゆり姉ちゃん…

「木村くん、いるの…」
 
 ベッドで寝ていると、そう声が聞こえてきた。

 あっ、ゆり姉ちゃんだ…
 俺は急にドキドキしてきてしまう。
 そして仕切りのカーテンが開く。

「えっ」
 ゆり姉ちゃんが、俺を見て一瞬にして固まったのだ。

そして俺の顔を見て、驚いて、いや、驚愕していた。

 ゴロゴロ、ゴロゴロ…

 その時、西の空から春雷の雷鳴がとどろいてきた。
 その雷鳴の響きは俺とゆり姉ちゃんの、心の中に鳴り響く音響と同じようであったのだ。

「えっ、ま、まさか…」
 ゆり姉ちゃんがそう驚きの呟きをする。

 ドキドキドキドキドキドキ…
 
 俺は一瞬にして緊張してしまう。


「え、た、ただし、たーちゃん…な…の…」
 驚いているようであった。

「いえ、違います…」
 俺はは微笑みながらそう返す。

「だ、だよね…」
 声が震えていた。


「でも、ただしの弟の啓介ですよ…
           ゆり姉ちゃん…」
 俺は敢えて、ゆり姉ちゃん、と呼んだのだ。


 ゴロゴロゴロ、ザザザー……

 再び外では春雷の雷鳴と、激しい夕立の豪雨の音が鳴り響く…

 
「えっ、あ、あの啓ちゃん…なの…」
 しどろもどろでそう言ってきた。

 そして俺はニッコリと微笑みながら、頷いた。


 ゴロゴロゴロ、ザザザー…

 春雷の雷鳴と豪雨の音が静かな保健室に響いていた。

 あれから7年が経っている…

 確か俺は、あの頃は10歳、小学4年生だった…

 あれから7年が経ち、今は17歳、高校2年生だ…

 7年という時の経過は、幼かった俺を兄貴そっくりに変えていたのだ。

 ゆり姉ちゃんと俺の7年振りの再会である…

 もう17歳だよ…

 胸のドキドキが、ザワザワに変わっていく。


 そしてゆり姉ちゃんの目が、7年前への想いに変わり、還っていくのを感じていた…


 ゆり姉ちゃん…



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