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雨の降る夜は傍にいて…

第2章 春雷

 19 インターハイ

 ドキドキ…

 わたしは保健室から体育館に戻って来てもまだ胸の昂ぶりが全然治まらないでいた。

 ああ、あの頃のただし、たーちゃんが生き返ってきたみたいだった…
 何度も話していてあの頃のたーちゃんと話している様な錯覚に陥りそうになってしまっていたのだ。

 兄弟って、あんなにそっくりになるんだ…

 たーちゃん…

 突然の交通事故で亡くなったたーちゃん…

 当時のわたしにはあまりにも突然過ぎて、全く現実感は感じられなかった。
 そんな亡くなり方をしたからわたし自身の中で、ただしの死という事を受け入れる事は、なかなかすぐにはできなかったのであったのだ。

 あれは高校二年の冬、そうウインターカップという、冬の全国大会の時であった。
 普通の運動部は大抵、夏のインターハイで区切を付けて三年生は部活動を引退をする。
 だがバスケットボール部に関してはこのウインターカップの予選で引退の区切となるのだ。
 たいがいの各地区はこのウインターカップの予選は10月末前後に行われ、そこで負けたら引退、そして無事ウインターカップ出場権を得たならば、12月23日から始まり、29日迄に終わる大会の期間中で引退となるのである。

 その年のウインターカップの予選から、いや、その半年前のインターハイ予選からわたしは絶好調であった。
 そして自分自身のバスケットボール人生を振り返ってみてもその夏のインターハイからこのウインターカップ迄の約半年間は最高に絶好調な時期、時間を過ごしていたのである。
 それは今迄のバスケットボールに青春の全てを掛けて築き上げた集大成であり、それが正に花開いたとも感じられたのだが、内心はただしとの関係のお陰でもあると思ってもいたのであった。

 あの毎週のような水曜日の夜の逢瀬により、精神的なストレスが発散できていたお陰であるとも思われたし、あの期間の性的関係がわたし自身の不安定な生理をも安定させてくれた面もあったと今は思えるのであった。
 とにかくただしとの関係は、肉体的にも精神的にもわたし自身に安定を与えてくれたのである。

 インターハイでは古豪の伝統校であり、その年の優勝校に準決勝で当たってしまって惜しくも敗退をしたのだが、最後の最後まで接戦となり、惜しくも僅か5点差で残り15秒で負けてしまったのだ」



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