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雨の降る夜は傍にいて…

第2章 春雷

 20 ウインターカップ

 その相手校にはその後も同世代のわたしが絶対に勝てなかった全日本でエースと呼ばれるスーパースターがいたのであるが、わたしはその試合に限り、そのスーパースターに一歩も引けをとらず、いや五分以上に闘えたのである。
 そして試合終了後にはそのスーパースター自らわたしに健闘の握手を求めてきてくれた程の大健闘をしたのであった。
 その年の国体もベスト8になり、そしてチームもわたし自身もそんな絶好調をキープしながらウインターカップに望んだのであった。

 そのウインターカップとは毎年東京で行われるのだ。



「ゆり、三回戦からなら観戦に行けるから」
 それがただしとの最後の会話となってしまったのである。

 そしてその三回戦の前日の夜にただしは交通事故で亡くなったのであった…




 三回戦、つまりはベスト8を掛けた試合であった、そしてクリスマスの日でもあった。

 相手は関西地区ナンバーツーの古豪であり、今大会の優勝候補の一つでもあった高校であったのだ。
 相手には185センチオーバーのセンターを擁する大型チーム、対しわたし達は最高で178センチのセンターが一人しかいない、どちらかといったら小柄なチームではあったのだが、関東地区ナンバーワンのスピードスターと云われていたわたし自身が絶好調でチームをスピードある速いチームとして引っ張っていた。

 大型チーム対スピードチームという対戦であったのだ…


 そしてその試合にわたしはスリーポイントシュート10本成功を含む、なんと48得点、11アシスト、10リバウンド、8スティールというトリプルダブルの成績でそのゲームを快勝したのである。


 そして今、その試合を振り返ってみると、その神がかり的な成績はきっと亡くなったただしの無念の不思議な想いがアシストしてくれたのではないのだろうか… 
 と、そうとしか思えないような物凄い成績であったのだ。

 事実、試合中でも不思議に思うシュートが何本かあった。

 それは、その日は、やみくもにシュートを打っても入ってしまうシュートが何本もあったからであったのだ。

 正に神がかり的な得点数は、ただしの不思議な力のお陰だったかもしれなかった…






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