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雨の降る夜は傍にいて…

第2章 春雷

 21 三回戦

 そしてその試合にわたしはなんと48得点、11アシスト、10リバウンド、8スティールというトリプルダブルの成績でそのゲームを快勝したのである。

 特にスリーポイントシュートは自身でも信じられないような結果であり、シュートすれば入るような感覚であったし、10リバウンドにしても185センチのセンターに対して160センチのわたしがしっかりとスクリーンアウトを仕掛け、ボックスアウト決めて相手センターを飛ばさせない、しっかりと抑えた結果のリバウンドといえ、後に絶大な評価を得て、小さい選手の見本であるとバスケットボール雑誌に特集される程であったのである。
 このゲームでわたしは一躍ウインターカップのスター選手の一人となったのである。

 そしてこの活躍はクリスマスプレゼントなんだ…
 そう思うくらいでもあった。

 しかし、それはただしの不思議な力のお陰だったのだと今は思っている…



 だが、そのゲームが終わる迄はただしの死亡事故の事は知る由もなく、てっきり観戦に来ているもんだと思っていたのであった。
 死亡事故の一報を聞いたのは宿舎のホテルに戻ってからであり、それも
『なんかうちの高校の誰かが交通事故になったらしいよ…』
 から始まった曖昧の情報からであった。
 そしてわたしはこの夜にはまだ全くその事故の件は知らなかったのである。
 ただしが交通事故で亡くなったらしい、という情報は次の日の朝食の時であった。

 そしてそこからの事はあまりにも衝撃的で、ショックで、記憶には今でもほぼないのである。
 もちろん試合にも全く集中できる筈もなく、前日の大活躍とは裏腹に、精彩を欠き、ミスの連発で、あげくには捻挫をしての途中退場をし、勿論、試合にも負けてしまったのである。

 そして次の記憶は、ただしのお葬式に参加したという事であったのだ…

 更にいつの間にかに年が明けていた…

 そのくらいに当時のわたしには衝撃的であり、ショックな出来事といえたのだ。
 
 

 そのウインターカップの次の記憶は、ただしのお葬式に参加したという事であったのだ…






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