雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
26 停電
「あの頃、たーちゃんもよく言ってたなぁ」
つい、呟いてしまう。
「えっ、兄貴もっ」
「うん…」
ゴロゴロ…
春雷の雷鳴も大分小さく遠のいていた。
「そうかぁ、兄貴もかぁ…」
「うん、よくそう言って走っていたわ…」
ブツンッ…
「あっ…」
その時である、突然、体育館内の、いや、停電であった。
遠のいた春雷の悪戯であろう。
そして一瞬にして真っ暗になったのである。
「ゆり…」
えっ…
その時、耳元でただしの声が聞こえた。
「ゆり…」
「あっ…」
そして不意に後ろから抱きつかれたのである。
「あんっ、た、たーちゃん…」
わたしは思わず、ただしの名前を呼んだのだ。
意識があの7年前に一瞬にして還ってしまったのだ。
そしてこの汗の匂いも、ただしそのものの匂いであったのだ…
「ゆ、ゆり…」
「あん、た、たーちゃん…」
わたしは首を後ろに向け、そして唇を寄せていく。
それは無意識であった…
一瞬にして7年前にタイムスリップしたかのようであった。
「あ……」
ぎこちない唇が合わさってきて、そして舌先が唇を割り込んでくる。
「た、たーちゃん…」
わたしはカラダの力が抜けてしまい、預けてしまった。
「ゆ、ゆり…」
「ゆり姉ちゃん…」
預けた大きな、汗だくのカラダがわたしを抱き締めてきた。
「あっ…」
ち、違う…
ただしじゃない、啓ちゃんだ…
ぎこちない唇が舌を吸い、熱い想いを流し込んできていた。
「あ、だ、ダメ…」
「ゆ、ゆり姉ちゃん…」
「ダメよ、離して…」
わたしの意識は現実に戻ったのだ。
「あ、け、啓ちゃん、だ、ダメよ…」
わたしは必死にもがき、啓介くんを振り払う。
「あっ…」
「ご、ごめん…」
そして停電は復旧し、管理室の電気が点いた。
「あっ、啓ちゃん…」
「ゆり姉ちゃん…」
わたし達は一気に夢から醒めたかの様にバツが悪く、互いに下を向いてしまう。
「啓ちゃん、ごめん…
なんか、つい、昔に戻ったみたいな錯覚しちゃって…」
わたしは必死に言い訳をする…
あの暗闇の中の、あの声がいけないんだ…
あの声が…
ゴロゴロゴロゴロ…
遠くで悪戯な春雷が小さく鳴っていた…
「あの頃、たーちゃんもよく言ってたなぁ」
つい、呟いてしまう。
「えっ、兄貴もっ」
「うん…」
ゴロゴロ…
春雷の雷鳴も大分小さく遠のいていた。
「そうかぁ、兄貴もかぁ…」
「うん、よくそう言って走っていたわ…」
ブツンッ…
「あっ…」
その時である、突然、体育館内の、いや、停電であった。
遠のいた春雷の悪戯であろう。
そして一瞬にして真っ暗になったのである。
「ゆり…」
えっ…
その時、耳元でただしの声が聞こえた。
「ゆり…」
「あっ…」
そして不意に後ろから抱きつかれたのである。
「あんっ、た、たーちゃん…」
わたしは思わず、ただしの名前を呼んだのだ。
意識があの7年前に一瞬にして還ってしまったのだ。
そしてこの汗の匂いも、ただしそのものの匂いであったのだ…
「ゆ、ゆり…」
「あん、た、たーちゃん…」
わたしは首を後ろに向け、そして唇を寄せていく。
それは無意識であった…
一瞬にして7年前にタイムスリップしたかのようであった。
「あ……」
ぎこちない唇が合わさってきて、そして舌先が唇を割り込んでくる。
「た、たーちゃん…」
わたしはカラダの力が抜けてしまい、預けてしまった。
「ゆ、ゆり…」
「ゆり姉ちゃん…」
預けた大きな、汗だくのカラダがわたしを抱き締めてきた。
「あっ…」
ち、違う…
ただしじゃない、啓ちゃんだ…
ぎこちない唇が舌を吸い、熱い想いを流し込んできていた。
「あ、だ、ダメ…」
「ゆ、ゆり姉ちゃん…」
「ダメよ、離して…」
わたしの意識は現実に戻ったのだ。
「あ、け、啓ちゃん、だ、ダメよ…」
わたしは必死にもがき、啓介くんを振り払う。
「あっ…」
「ご、ごめん…」
そして停電は復旧し、管理室の電気が点いた。
「あっ、啓ちゃん…」
「ゆり姉ちゃん…」
わたし達は一気に夢から醒めたかの様にバツが悪く、互いに下を向いてしまう。
「啓ちゃん、ごめん…
なんか、つい、昔に戻ったみたいな錯覚しちゃって…」
わたしは必死に言い訳をする…
あの暗闇の中の、あの声がいけないんだ…
あの声が…
ゴロゴロゴロゴロ…
遠くで悪戯な春雷が小さく鳴っていた…