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雨の降る夜は傍にいて…

第2章 春雷

 57 コンプレックスの正体

 俺の中にある亡くなった兄貴に対してずうっと持っていた、抱いていたコンプレックス。

 兄貴には適わないや…

 その想いが今、分かった気がしていた。

 俺は兄貴ただしが突然の交通事故で亡くなり、半狂乱になって嘆き、哀しんだ母親の姿を目の当たりにして

 お母さんの為にもこれから頑張っていくんだ…

 必ずお母さんを笑顔にするんだ…

 そう心に誓って兄貴の後を追うように、野球を始め、また、勉強も頑張ったのだ。
 そして中学時代は野球で全国大会に出場し、県内最強の選手と評価され、また、勉強でも常に学年トップを維持し、兄貴の通っていたこの私立高校へS級特待生として、野球部に入部し、運動部禁止の特別進学クラスにも特例として入学したのだ。
 これはこの私立高校の歴史上初めての快挙であると理事長直々に伝えられた事実である。

 母親は喜んでくれた…

 そして兄貴の7回忌法要を無事に済ませ、完全に母親の中には俺だけが存在し始めている等が実感できたのである。

 だが…

 なぜか…

 なぜなのだろうか…

 いつも、常に、心の奥深くに

 兄貴には適わないや…

 という想いが常にシコリのように存在していたのであったのだ。
 そしてそのシコリの想いが、積もり重なってコンプレックスとしてカタチを成し、それが常に心の奥深く、いや、隅に存在していたのである。

 そのコンプレックス

 兄貴には適わないや…

 それをいくら考えても、野球でも、勉強でも、全て兄貴を上回る成績を収めている今を、いくら考えても、ずっと、今までそのコンプレックスの原因がわからないでいたのだ。
 
 だが…

 今、分かったのだ…

 ゆり姉ちゃんを上から抱き締め、愛し合い、心を征服でき、彼女の中にこの7年間の想いを込めた激情の射精を放った瞬間に

 全ての疑問が…

 コンプレックスの想いの元が…

 完全にわかった、いや、理解できたのである。

 俺に唯一欠けていたモノ…

 兄貴に追い着く為に、唯一足りなかったモノ…

 これはゆり姉ちゃんの存在…

 ゆり姉ちゃんに匹敵する存在…

 やっぱりこれが足らなかったのである。

 これが、ずっと抱いてきた、兄貴に対するコンプレックスの正体だったのだ…




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