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願望アプリ

第1章 願望アプリ

「違わないよ! ちゃんと証拠はあるんだからね、ホラ!」


 そう叫ぶと、京子ちゃんは自分のスマホ画面を僕たちに見せてきた。
 そこには僕そっくりのアバターがいて、赤いコートを着ている。


《中島に美晴ちゃんを取られた……悔しい》

《一晩中泣いちゃったよ……慰めて?》

《じゃあ、美晴ちゃんになりきってくれたら触ってあげるよ》

《君もスリルを楽しみたいだろ? そうだな、場所は電車の中で。バレンタインデー当日、きさらぎ駅11時50分着の4両目の電車の中で、赤いコート着て待ってるよ》


 僕の顔で僕の声で、そいつはあり得ないことを口走った。


「ち、ちがうっ……僕はそんなこと言ってない! てゆうか、これは僕じゃない!」


 しかし周りの人間はドン引いていた。
 通行人は僕に向かって「変態」と言い放ち、クスクスと笑っている。


 なんなんだ、これは……
 一体どういうことなんだ……
 意味がわからない!


 とにかく誤解を解こうと美晴ちゃんの顔を見ると、完全に目が据わっていた。


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