禁断の夏合宿
第1章 臨時コーチ
そんな憧れの彼女が秘密事の相談?
駅前の喫茶店で向かい合わせに座ると、
いやがうえにも、
彼女を女として意識せざるを得なかった。
「えっと、ご相談ってのは」
話しかけた吉本を
桜川はコホンと咳払いして
ちょっと待ってとばかりに顔をしかめた。
その直後「ご注文は?」と
ウエイトレスが二人の席に近づいてきた。
そっか、そっか…
あまり聞かれたくない話なのだなと
吉本は理解した。
いやがうえにも
男と女の話ではないかという気持ちを
昂らせた。
「コーヒーを二つ…」
それでいいですよね?という視線を
桜川に送ると
「あ、私はホットミルクをいただくわ」
その時は、ずいぶんと健康志向なんだなと
あまり気にもとめなかった。
コーヒーとミルクが運ばれてきて
落ち着くと桜川がその口を開いた。
「君さあ」
き、君?!
完全に後輩と見下した口調に吉本は驚いた。
「君、学生時代に水泳をしてたよね」
桜川のように名の通った選手ではなかったが、
それでもそこそこの成績を残していた。
「ええ、まあ…」
そういえば桜川は
勤務している我が校の
水泳部の顧問をしていたことを
吉本は思い出した。