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片恋は右隣

第4章 幸せになったらダメなんですか


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「なんかあったのかなあ? 倉沢さん」

そんな風に首を捻りながら迎えた月曜だった。


────それからあと、もうひとつ。

先週末に彼と一緒に外を歩いてたときに、こころなしか周囲の視線を感じた。
それが長身小顔でイケメンな倉沢さんのせいだと気付いた。
そこでつい気が引けて、彼の後ろに隠れようとしたのだけど。

こんなことでいちいちいじけてたら、また週末の夜みたいに倉沢さんに気を遣わせるもの。
中身までこれ以上ブスになりたくないし。 そう思いなおした。

ついでにそんな思いをしないように、見た目もこれからは手を抜かないことにした。

そして彼に少しでも近付けるようになれたら。
そしたらもしかして、彼にふさわしい一歩を踏み出せるような気がした。


「おはようございます。 週末はゆっくりできました?」

会社で倉沢さんにメッセージを送るとすぐに返信があったのでびっくりした。

『おはよう。 うん。 でも、今日から別部署だね。 寂しいよ』

ちょっと弱り気味の彼に困ったみたいな笑いがこぼれた。

「今週は歓迎会もありますし、落ち着いた週半ばにランチでも?」

『ホント? 楽しみにしてるから』

わたしの右隣にもう彼はいない。
彼の異動先は同じフロアといっても、立ち上がってみえる位置にはない。

ほっとするような寂しいような、そんな気分だった。
伸びをして、ひと息つこうと席を立つ。



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