片恋は右隣
第2章 ワンナイトじゃないんですか
「うーん、和食の創作とかは?」
「下見に付き合ってくれます?」
こういうのが本当に下見目的なのかは分からないけど、とりあえずわたしにはその気はない。
何度か飲みにいってるし。
まあね、この子にも当然興味ないんだろうけど。
三十路越えの女になんて。
特に自嘲もせずそう思う。
「いつも会社の近所だもんね。 南口まで足伸ばしてみるのは?」
「徒歩圏内なら全然構いませんよ」
この子、北陸出身っていってっけ。
背は高いけど細身で、色白で表情豊か。
持ってる雰囲気が倉沢さんとは真逆だ。
誘いを断る理由もなく、そのまま雑談などをして別れた。
わたしにとって地元といっても、こちらには一緒に出掛ける親しい間柄の人はいない。
会社でもごく事務的な付き合いしかしないから、彼のような存在は貴重でもある。
スマホのスケジュールに登録をして、「どっかいいとこあったっけ?」などと呟きパラパラとお店のページをめくった。