片恋は右隣
第2章 ワンナイトじゃないんですか
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人事異動から一週間とちょっとが経った。
くすんだ色の木の葉がまだ残暑の陽ざしの強さを物語るように、横断歩道で信号を待つ人に木陰を提供している。
その中に混ざり、今朝もどちらかというと重い気分でわたしはオフィスビルの入り口の門をくぐった。
倉沢さんは·····はっきりいって面倒だった。
「三上さん、このワークフローですけど違いはなんですか?」
「すみません。 このデータの作り方って」
「来週の定例会のアジェンダと過去議事録ってどこ入ってます?」
そういえば彼は昔から、予習なんかもキッチリやってくるタイプだったから色々と聞いてくるんだろう。
出来れば関わりたくないのが本音だった。
わたしは昼休憩も席を外して会議室の弁当派に変えたし。
メイクも服装も女っぽいのは避けたし。
倉沢さんと同様に他の人とも私語はしなくなった。
早く他の人に役割が変わればいいのに。
席替えになればいいのに。
·····こんな自分も大概面倒だと思う。
けれど、クラスが違ったただの同級生とはいえ、十年一緒だった人間を忘れるモンかしら。
眼鏡で引っ込み思案。
つまんなかった昔の自分……今も大して面白くないけど。
たぶん周りからみたら、塵みたいな存在だったんだろう。
彼と居るとそんな余計なコンプレックスまで刺激される。