片恋は右隣
第5章 わたしを愛してくれるんですか
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翌朝は金曜で、倉沢さんは早朝に一旦実家に戻っていった。
平日なのにやっぱり我儘だったかな、 そんな思いが自分の顔に出てたらしい。
「変わんないよ。 うち歩いて五分なんだし。 着替えてまた出るだけ。 それよか三上さんの抱き枕、寝心地よかったから」
笑いながらそんなことを言った。
わたしの方も二度寝する気も起こらず、パラパラとネットのニュースに目を通す。
早めに身支度を終えてから外に出た。
出社をしてからバッグをしまい、PCの電源を付けていると、課長同士が話していた内容がなんとなく耳に入ってきた。
「聞きました? 花邑、事故で全治二ヶ月だと」
「階段で頭から突っ込んだって? 酔ってたんでしょうかね。 鼻の骨折って、痛みも見た目もキツいですからね」
「…………」
嫌な予感がした。
なんか、それ。
事故にしてはタイミングがおかし過ぎる。
複雑な気分でスマホを取り出し、久しぶりにメッセージを送ってみる。
「倉沢さん。 あの、花邑くん事故で入院ですって」
『えっそうなの。 気の毒だね』
「あそこで見たホテルの血ってもしかして」
『鼻ってさ、たとえば肘とかで簡単に折れるから。 危ない危ない。 帰ってきたら優しくしてやんなきゃね』
「わたし鼻とかって言ってないけど」
彼の返信が止まる。
分かりやすい人だ。
「倉沢さん? 今日ランチでもどうですか?」
ややのちに、ひと言だけの返事が来た。
『はい』