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終焉告げる金色の蝶と死想の少女

第3章 金色の蝶

満足気なローエンは、月伽の髪を掬い取る。特に動じる事のない少女は、男の話の続きを待つ。


「先程の答えが真実なので、答える義理はないのが本音ですが――“条件”を口にしたのは私ですから。ここに来るまで、舞っていた蝶たちが叶えられた者。その証。

美しい蝶になれるのは限られてますがね。望んだ終焉、告げられた終焉の夢が美しければ美しいほど、真実になれる」

「意外です。ローエンなのに」

「お褒めに預かり光栄です。私としては面白い物語をたくさん聞けるので、美味しい役割だと思ってますから。それでも好き嫌いはありますし、興味ないものに慈悲をかけるような真似はしません。馬鹿馬鹿しいので」


綺麗な笑顔で毒を吐く。嘘を語らない。だから信用できるとは言わないが、少なくとも月伽にとっては、居心地のいい相手である事には変わりない。


「望んだ終焉をくれるのでしょう? 少なくともローエンは、“私”を理解してくれますよね《金色の蝶》なのだから」


ずっと望んでいた美しい“死”を。


ローエンは月伽から瞳を逸らさず、何も語らない。


時間(とき)の沈黙した部屋で柊は、呼吸すらも忘れそうになるくらい、深く昏い水底にいるようだと息を呑む。


――相変わらず主は読めない。誰も夜の底を、真実(ほんとう)の意味で識る事はできないだろう。


そもそも識りたい者なんているだろうか。自ら進んで、毒を食らう物好きなど。


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