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鬼の姦淫

第1章 血のおくり花


小竹 愛理。

それは私の幼なじみで親友であり、私がひそかに思いを寄せていた彼の彼女でもあった。

同じ異性に恋をしたにしろ、愛理に気付かれないように彼を諦める。
私にとって、それは困難なことではなかった。

それほどに彼女はいい子で、なによりも私と愛理はとても仲が良かったから。
まるで同い年の姉妹みたいに。


林道が延々と続く途中。
木の下にはクマザサなどが鬱蒼と生い茂る、田舎では目立たない場所。

「────萌子! なんで来た!?」

警察や救急、町の男性などが大勢いき交っていた。
私の姿を見つけた若林くんが駆け寄ってきた。

ブナの明るい緑が印象的で静かな林はそろそろ夏の盛りも過ぎ、今年もオレンジ色の紅葉をみせてくれることだろう。
学校帰りに、愛理とどんぐりを拾って寄り道をしてたことを覚えている。


そんな思い出なんてかけらも見当たらない光景だった。

人だかりは一様に厳しい表情をしていた。
なにかのショックでも受けたように口に手のひらを当てている人がいた。
バタバタ走り回りながら電話で大声を出している人もいる。

若林くんが私の目の前に立ちはだかっている。
慌ただしい周りを背景に、私の両肩をつかんでいる彼の様子も尋常じゃなかった。

目が赤かったし、もともと色白な顔の色は透けそうで、蒼白といってよかった。


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